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ゼンブ・オブ・トーキョー感想。アイドルファンのための映画だったのか

今月25日より公開されている本作は、日向坂46四期生の全員が出演していることから、ただおひさま(※ファンの総称)のために作られたと思う人もいるでしょう。

また、グループを知らない人からすれば何やら女子高生がワイワイしている映画っぽいけど果たして面白いんだろうか?そんな印象を予告から受けるかもしれません。

では実際のところはどうだったのか。筆者はおひさまであることから贔屓目に、甘めに評価してしまう可能性がありますが、それをグッと堪えてなるべく客観的に書くよう意識しました。

本記事をきっかけにして、興味が無かった、見る気が無かった人が1人でも行くきっかけになれば幸いです。

 

ゼンブ・オブ・トーキョーにおける日向坂46四期生の演技力について

一番の懸念点はこれという人もいるでしょう。アイドルは歌って踊るのが本業であり、演じることはあくまでも付随的な仕事です。

もちろん今のアイドルはマルチな活躍が求められており、また、その求めに見事に応えられる人材が数多く存在しています。アイドル=演技が下手なんてことはなく、卒業後はそのまま女優業に進み活躍しているアイドルも大勢います。

日向坂46でいえば卒業したみほちー(渡邉美穂さん)や影ちゃん(影山優佳さん)、きょんこ(齊藤京子さん)がそうですよね。

 

では、実際のところ四期生はどうだったのかですが、驚くべきことに棒読みでぎこちない、下手な演技をしているメンバーは1人もいませんでした。これ、本当に凄い事です。

以前も演技経験があるならまだしも、全員が演技未経験で、誰か一人が悪目立ちするようなことも無いというのは珍しいのではないでしょうか。

逆の意味で目立っていたというか、筆者が特に演技がナチュラルだと感じたのはたまちゃん(石塚瑶季さん)とかほりん(藤嶌果歩さん)、コニ様(小西夏菜実さん)でした。表情や動作が本当に自然で、本当に説田詩央里、羽川恵、桝谷綾乃という人間が実在するのではないかと思ったほどです。

演技の下手さが作品の出来を邪魔している。そういうことが無いというのは作品を楽しむ上で大事な要素の一つですよね。

 

ゼンブ・オブ・トーキョーはファン向けの映画なのか

前述した通り本作は「日向坂46四期生」が主演の映画です。ということは、彼女たちのキャラクターを知っているほうが楽しめるのではないかと考えるのは至極自然な流れのように思います。

実際に映画を見てみてですがそんなことは全くなく、例え日向坂46を全く知らなかったとしても安心して内容を楽しめる作りになっていました。

何かファンだけがわかる小ネタのような物ばかりということもありません。ただ、作中に流れてくる音楽が四期生の楽曲というように知っているとフフッとなるようなものはいくつかありました。

もっとも、本筋とは全く関係ないので、内容を純粋に楽しむうえでは四期生の事を知っていようが知っていまいがあまり関係ないと言えるでしょう。

 

一点だけ「おや?」と思ったのは、りなし(渡辺莉奈さん)演じる桐井智紗がアイドルを志すようになったきっかけのシーンです。これはおそらくではありますが、ひらほー(平尾帆夏さん)がみほちーからかけられた言葉から作られたのではないでしょうか。
※ひらほーのドキュメンタリーでこの話は語られています

 

ゼンブ・オブ・トーキョーのネタバレ感想

※極力内容を避けるようにはしますが、若干のネタバレを含むため未視聴のかたはご注意ください

 

まずは冒頭に流れる劇中歌である「急行券とリズム」(歌・Conton Candy)との相性の良さが非常に印象に残りました。作品の青春感やキラメキ、その一瞬しかない刹那的な雰囲気が本当にピッタリで、これ以上の劇中歌はなかっただろうと思わせるほどです。

作品の入りが余りにも良かったため、これからの内容にとても期待感を抱かせました。

 

内容としては冒頭からしばらくは本当にありふれた高校生の修学旅行という感じで、少しでも物語に触れたことがある人であれば「こういう日常パートが最初に来る場合は中盤から劇的な何かが起こるんじゃないだろうか」と変に身構えてしまうかもしれません。少なくとも筆者はちょっと身構えていました笑

もっとも、それが良い意味で裏切られており、日常の延長、あくまでも修学旅行という枠を出ずに、ゆっくりと、でもしっかり物語は広がりを見せ、ちゃんと収束するという見事な作りになっていました。

主人公であるしょげこ(正源司陽子さん)が演じる池園優里香の割合はもちろん多くはなっていましたが、それも気になるほどではなく、全員が満遍なく登場し、それぞれにスポットが当たるような内容になっていたのも凄かったです。

 

通常、こういったメインの登場人物が多い作品というのはどうしても場面転換が目まぐるしくなりがちで、下手をすると取っ散らかってしまって見難くなってしまいます。

それが本作は全く無くて、場面転換も絶妙でしたし、変にそれぞれの一見関係なさそうな行動が伏線となっていて、最後に一気に収束するみたいな仕掛けもない。でもちゃんと物語は盛り上がりを見せるし、見終わった最後には何とも言えない満足感と少しの寂しさを感じる。

あくまでも現実にいるであろう等身大の高校生が抱えている想いに焦点を当て、大きな事件は起きないけどそれでも彼女たちにとっては大きな事というニュアンスが見事に表現されていたように思います。

 

また、このようにあえて劇的な展開にしないような内容となると、どうしても中だるみしてしまったり、冗長になったりして飽きてしまうことがあります。

それを防いでくれていたのがところどころに散りばめられた、狙い過ぎていない絶妙な笑いどころの数々でした。筆者が特に好きだったのはかほりん演じる恵ときらりん(竹内希来里さん)演じる辻坂美緒との掛け合いと、コニ様演じる桝谷、ひらほー演じる花里深雪、みっちゃん(平岡海月さん)演じる満武夢華のやり取りです。

前者2人のやり取りはまるで漫才を見ているかのように軽妙で、隠れて同級生の男子を見守りながらのシーンなんかは何度見てもおそらく笑ってしまうと思います。

後者3人のやり取りも絶妙で、花里のピュアで悪気が無い言葉が桝谷を追い詰めていくのも、それを生暖かい目で夢華が見守っているのが本当に面白かったです。カフェのシーンなんかはそれが特に表れていて、あそこが一番好き!という人もいるのではないでしょうか。

 

最初はバラバラに行動していた四期生たちが、最後は一つの目的のために一致団結する様がまた素敵で、バラバラだったころも確かに面白くはあったけど、やっぱりみんなで何かを成し遂げるというのは良いものだよなと改めて思わされました。

そして、分かり易く最後は大団円になるというわけではなく、頑張ったけど上手くいかなかったというリアリティさがまた良かったです。上手くいかなかった、でもそこに向かうまでの行動は尊いし無駄ではない。得られたものは確かにあるというのが正に「青春」でしたね。

このほろ苦さのようなものが逆に見ていて心に刺さったというか、じんわりと胸に広がっていってしみじみと「良い映画だったな」と思わせたのかもしれません。最高にスリリングでエキサイティングでというわけではないのに、また見たくなるし心にしまっておきたくなる。そんな映画だったように思います。

 

おわりに

本作のターゲットは第一には日向坂46のファンで、次点では現役の高校生のように一見思えますが、日向坂46を全く知らない大人も楽しめる作品になっていると思います。

それは変に彼女たちをアイドル扱いするのではなく、あくまでも青春群像劇を撮る上で演じたのがたまたまアイドルだったといわんばかりの作りになっていたからではないでしょうか。

この作品の公開が発表された当初、筆者はなぜ実際の名前で作らなかったのだろう。これでは変にファンが混乱するというか、名前を覚え難いのではないだろうかと思ったのですが、見終わってこの考えが的外れも良いところだったと猛省しました。

ファン以外に広まるには時間がかかるかもしれませんが、良い作品は絶対に評価されるのが世の常です。きっと評判が評判を呼んでたくさんの人に愛される作品になると筆者は確信しています。

副音声の上映も楽しみですし、最低でもあと2、3回は見る予定です。あなたがまだ観てなくてちょっと興味が出たのであれば、騙されたと思って一度見に行くことを強くお勧めします。

そこには誰しもが憧れるであろう青春の”ゼンブ”が詰まっていること間違いなしです。

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